大学で太鼓やルバブ(胡弓)、グンデル(ビブラフォン型鍵盤楽器)などの楽器を教える時、先生はたいていホワイトボードに楽譜をずらずら〜っと書きます。生徒はまずそれを写して、真似して弾くことから始めます。その際にどの先生も必ずおっしゃるのが「これはあくまでも一例であり、他の演奏家は違う弾き方をするでしょう。私も実際に演奏する時は変わってきます。だから様々な録音を聞いて、いろんなバリエーションを集めなさい。楽譜通りにしか弾けないのでは良くない」ということです。毎年ほぼ同じ課題曲なのに、そのたびごとにわざわざホワイトボードに楽譜を書くのは、もしかしたら楽譜を固定化させたくないという思いがあるのかもしれません。それでも、初めて習う学生には何か手掛かりが必要なので、やむを得ず楽譜を使っている…、そんなふうに見えます。演奏会が巷で頻繁に行われていた昔だったらそんな必要も無かったのかもしれませんが、演奏を聞く機会がめっきり減ってしまった今となっては仕方の無いことなのかもしれません。でも学生にとっては、とりあえず先生が示してくれた楽譜だけに満足せず、そこから自分の努力が始まるわけで、その部分に食い尽いていけるかどうかが素晴らしい演奏家になる一つの分かれ目のようにも思います。
(左からガンバン、グンデル、シトゥル)